チチャ (Chicha)

 チチャはトウモロコシを原料とする酒。
 ペルー特に農村では朝昼晩問わず日常的に飲まれており、酔っ払うほどアルコール度は高くない。低アルコールのビール風飲み物だ。チチャは各家庭で作られ、その風味や旨さはその家ごとに違うという。地域によっては、キヌアというアカザ科の植物やマニオク(キャッサバ)などのイモ類を用い、アマゾンではパイナップルを原料にしているチチャもある。

芽の出たとうもろこしとチチャ甕で発酵させる
 
 チチャは、発芽したトウモロコシを天日で干し、石臼で潰してから粉末にする。これを煮たのち、発酵させる。発酵を始めたチチャは、1日目から飲めるようになり、3日目までが旨いと言う。飲み頃はお好みだが、7日もすれば舌を刺すほど酸っぱくなるという。どの家庭でもほぼ毎日チチャを作る。これは毎日飲みきってしまうこともあるだろうが、発酵が進んでしまい、飲み頃が短いことがその理由だろう。
 その昔、チチャは唾液で発酵させて作っていた。インカの時代、チチャは「アクヤクーナ(太陽の乙女たち)」と呼ばれる聖少女(処女の女性)が「処女の館」で噛み砕くトウモロコシを使って作られ、王が太陽神に捧げたのち、自らが飲むといった宗教儀礼があったという。
 現代でもチチャの飲み方には、ちょっとした作法がある。最初に太陽の神へ杯を捧げ、続いて土の神へ数滴のチチャを捧げ、その後に飲むというもの。チチャがインカの時代から宗教儀礼に用いられていたことを感じさせる作法だ。
 
農家のお母さん、チチャ作りの名人チチャをご馳走になった農家のお母さん
 
 チチャをご馳走になった家のお母さんは、チチャ作りの名人として賞を受けたことがある。そのときの新聞の切抜きが台所の壁に貼ってあった。
 
納屋にはモルモットが・・・
 
このお母さんの家の小屋にはクイ(モルモット)がたくさんか飼われていた。これは食用に飼われており、丸焼きなどにしてご馳走料理にする。クスコのカテドラルに描かれた”最後の晩餐”では、そのテーブルの上にはクイが供されており、キリストと12使徒もクイを食べたことになっている。

 ビールも最後の晩餐も、所変われば・・・・である。

【参考】
 チチャモラーダとは・・・

  レストランで見かけるチチャモラーダ(Chicha morada)は、紫トウモロコシを使って作られたチチャ。これはアルコール分が無く、チチャとは違い、ジュースと言ってよい。チチャモラーダはポリフェノールが多く、健康に良いと言われている。紫トウモロコシの収穫時期以外のチチャモラーダは、ブドウジュースを水で薄めて出しているといわれるほど、ペルーの人は本物のチチャモラーダにはうるさい。

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