「ヒツジノツノガイ」(羊の角貝)
もし、日本近海に生息していたならば、こんな和名を与えられたかもしれない。
巻貝のように見えるが、RAM’S HORN SHELLは貝類ではない。「トグロコウイカ」というイカの貝殻である。
そもそも貝殻とは、貝(軟体動物や腕足動物など)が外套膜の外面に分泌して作る硬い組織のこと。一般にはハマグリやサザエのような貝類の外殻だけを思い浮かべるが、さにあらず。貝類はもちろん、イカやタコのような頭足類にも貝殻はある。
イカの場合、体の中に空室が発達してできた貝殻をもち、浮き袋の役割を果たして中性浮力を実現して遊泳を助けている。同じ軟体動物でも進化の途上で貝殻が小さくなったり、ナメクジやウミウシのように貝殻を失った軟体動物も多い。
このトグロコウイカは体長(外套長)は3cmから4cm程度。イカとしては小さい種類で、カリブ海や太西洋、インド洋、ニュージーランド近海など熱帯水域の200?700m位の中層に浮遊している。巻貝のような形の多室性の貝殻をもっているので、垂直になって浮遊している。この貝殻があるのは、いわゆる”頭側”。つまり足とは反対側に備わっており、外套に透けて見える。
本体は、ニュージーランドの海辺に打ちあがったものを知人に拾ってきてもらった。私自身はトグロコウイカそのものをまだ見たことがないが、いつか熱帯の海で見てみたいものだ。
トグロコウイカについて、参考にした情報
原色世界イカ類図鑑