タコノマクラ

タコノマクラ(表)タコノマクラ

 三浦半島の西側、三戸浜でタコノマクラを数多く見つけた。三戸浜は砂地の海底で、さまざまな種類の海の生物が打ち上げされ、漂着する。タカラガイの種類も豊富だ。
 タコノマクラは棘皮動物でウニの仲間で直径約10センチメートルほど。(タコノマクラ目タコノマクラ亜目タコノマクラ科)
 表面は短い棘に覆われ、花びらのような模様がある。生きているものは薄い赤色だが、死んだり傷が付くと写真のように緑色に変色する。普段は海底の砂地に生息し、海草などを身に纏っている。動きは極めてのんびり。
 よく見ると一つの花びらだけ前端が開いている。花びらの中心部分に5つの生殖孔がある。腹面の中央が口、その端に肛門。口の部分にむかって5つの食溝が走っている。

タコノマクラ(表裏)タコノマクラの外骨格
 左が表、右が裏。 そしてタコノマクラの外骨格

 タコノマクラの仲間にスカシカシパンとかオニブンブクなどがおり、コレクションしたい衝動に駆られる。しかし保存にはタコノマクラの外骨格を漂白する必要がある。入れ歯洗浄剤などで漂白するとときれいな真っ白になるが、漂白の手を抜くと臭くて臭くて堪らないので要注意!

 ところでタコノマクラの仲間の、スカシカシパン。タレントの中川祥子が「ギザカワユス」とブログで紹介したスカシカシパン。その結果、スカシカシパンは全国区の知名度になった。その後、スカシカシパンマンをプロデュースしているほど。

 タコノマクラも紹介してほしいものだ。

イカの甲

 海辺を歩いていると、漂着した白い楕円状のものを見かける。イカの「甲」だ。烏賊骨(うぞっこつ)などとも呼ばれ、英語ではカトルボーン(cuttlebone)という。ちなみに英語では、甲のあるコウイカの仲間をcuttlefishといい、その他のイカをsquidと呼び分ける。
 
コウイカの「甲」(A面)コウイカの「甲」(B面)
  コウイカの「甲」(A面とB面)

 イカは大きくグループ分けすると、コウイカ目、ダンゴイカ目、ツツイカ目の三つに分類される。このなかでもコウイカはウレタンフォームのような「甲」を体の中にもち、浮力を得ている。甲の表面は柔らかく爪で擦ると傷が付く。(生きている状態での甲も同じだろうか?いずれ機会があれば、コブシメを手に入れて確認してみたい。

表面を爪で引っかいてみる甲の断面
  表面を爪で引っかいてみると傷が付く。断面はミルフィーユ状だ。

 この甲を割ってみると、その断面は幾層にも重なった洋菓子の”ミルフィーユ”のようになっている。甲の材質は炭酸カルシウムで構成された気泡を含む構造のため、軽く浮力を得やすい。
 そもそも「甲」は、貝殻の痕跡器官であり、主として炭酸カルシウムから構成されている。もともとは巻貝状、あるいはツノガイ状の形であったと考えられ、今では巻貝状の甲をもつイカはトグロコウイカのみである。トグロコウイカの巻貝にあたる部分は気室があるが、コウイカにはそのような気室は残っておらず、それに当たる部分は現在の骨の端っこ(尖がっている部分)が巻貝部分の名残といわれて、コウイカの甲の大半は新たに”浮き”として発達したものと考えられている。
 
 生きていく環境に応じて適応していく生物の進化は、本当に興味深いものばかりだ。
 
イカの分類
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RAM’S HORN SHELL

RAM’S HORN SHELL
 
 「ヒツジノツノガイ」(羊の角貝)
 もし、日本近海に生息していたならば、こんな和名を与えられたかもしれない。
 巻貝のように見えるが、RAM’S HORN SHELLは貝類ではない。「トグロコウイカ」というイカの貝殻である。

 そもそも貝殻とは、貝(軟体動物や腕足動物など)が外套膜の外面に分泌して作る硬い組織のこと。一般にはハマグリやサザエのような貝類の外殻だけを思い浮かべるが、さにあらず。貝類はもちろん、イカやタコのような頭足類にも貝殻はある。
 イカの場合、体の中に空室が発達してできた貝殻をもち、浮き袋の役割を果たして中性浮力を実現して遊泳を助けている。同じ軟体動物でも進化の途上で貝殻が小さくなったり、ナメクジやウミウシのように貝殻を失った軟体動物も多い。

 このトグロコウイカは体長(外套長)は3cmから4cm程度。イカとしては小さい種類で、カリブ海や太西洋、インド洋、ニュージーランド近海など熱帯水域の200?700m位の中層に浮遊している。巻貝のような形の多室性の貝殻をもっているので、垂直になって浮遊している。この貝殻があるのは、いわゆる”頭側”。つまり足とは反対側に備わっており、外套に透けて見える。
 
甲は直径15ミリ程度
 
 本体は、ニュージーランドの海辺に打ちあがったものを知人に拾ってきてもらった。私自身はトグロコウイカそのものをまだ見たことがないが、いつか熱帯の海で見てみたいものだ。

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三角形の骨

三角形の骨

 ハワイアンの習俗や歴史について勉強するためにビショップ博物館などに行った。その折、知人に会うために出かけた、ハワイカイの環礁内で採取した骨がこの写真。

 形状はほぼ三角形で一辺が4cm程度。写真の手前側には、ほかの骨との接合部と思われる突起部分がある。採取当初は亀類の骨の一部のようにも思ったが、該当する骨もなく、現在調査確認中。 
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サメの椎体

サメ類椎骨 shark vertebra

 写真の”ホネらしき”は、神奈川県鎌倉材木座海岸で採取したものです。(漂着物学会の会員らしい活動もしています)
 左下の一点は2007年に、ほか二点は2005年に同じ海岸のほぼ同じ場所で採取したもので、”ホネらしき”はサメ類の椎体でした。(サメの種類までは不明のままです)

 今回調べ物をするにあたり、アドバイスいただきました平塚市立博物館長の浜口さんに感謝!ありがとうございました。

サメのなかみはふにゃふにゃ

 そもそも博物館などで見かけるサメは、化石や剥製ばかりで、骨格標本になっている姿を見たことがない。なぜだろう??
 考えてみれば、コトは極めてシンプルだった。魚類は大きく分けて、硬骨魚類と軟骨魚類に分けられる。魚類全体では約97%が硬骨魚類といわれている。残り3%の軟骨魚類にサメやエイが分類されている。つまり硬骨魚類であれば骨格標本を作ることができるが、軟骨は腐ってしまうために全身が軟骨で形成されているサメの骨格標本は、石灰化したアゴと歯だけが残るだけなのだ。あちこちでサメの骨格標本や骨格図を求めても、なかなか見つからないわけだ。ちなみに軟骨とはいえ、サメにも背骨はある。この背骨も包丁でサクッっと切れてしまうらしい。

これはどこのホネ?

 写真のホネはサメの背骨の”芯”にあたる部分だ。軟骨なら腐食してしまうため残らない。サメの背骨は軟骨でできているものの、サメの背骨の中心部分、つまり椎体は鉱物質で硬く、これが写真のように残るのだという。この椎体が円の部分を接するように連結して”背骨”を形成しているのだ。

余談

 サメの背ビレや尾ビレも”背骨”とつながっている。しかし、そのつながりも軟骨でできており、ヒレは繊維状の組織で形を保っている。フカヒレには骨がなく、”歯ごたえのある寒天”といった食感だが、これは地道にフカヒレの骨を取り除いているのではなく、最初から骨がないのだ。

(注)この記事はずいぶんと端折って、理解しやすく書くことを優先しました。学術的に正しく詳細に理解される場合には、本記事だけでは十分とはいえません。
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