イカの甲

 海辺を歩いていると、漂着した白い楕円状のものを見かける。イカの「甲」だ。烏賊骨(うぞっこつ)などとも呼ばれ、英語ではカトルボーン(cuttlebone)という。ちなみに英語では、甲のあるコウイカの仲間をcuttlefishといい、その他のイカをsquidと呼び分ける。
 
コウイカの「甲」(A面)コウイカの「甲」(B面)
  コウイカの「甲」(A面とB面)

 イカは大きくグループ分けすると、コウイカ目、ダンゴイカ目、ツツイカ目の三つに分類される。このなかでもコウイカはウレタンフォームのような「甲」を体の中にもち、浮力を得ている。甲の表面は柔らかく爪で擦ると傷が付く。(生きている状態での甲も同じだろうか?いずれ機会があれば、コブシメを手に入れて確認してみたい。

表面を爪で引っかいてみる甲の断面
  表面を爪で引っかいてみると傷が付く。断面はミルフィーユ状だ。

 この甲を割ってみると、その断面は幾層にも重なった洋菓子の”ミルフィーユ”のようになっている。甲の材質は炭酸カルシウムで構成された気泡を含む構造のため、軽く浮力を得やすい。
 そもそも「甲」は、貝殻の痕跡器官であり、主として炭酸カルシウムから構成されている。もともとは巻貝状、あるいはツノガイ状の形であったと考えられ、今では巻貝状の甲をもつイカはトグロコウイカのみである。トグロコウイカの巻貝にあたる部分は気室があるが、コウイカにはそのような気室は残っておらず、それに当たる部分は現在の骨の端っこ(尖がっている部分)が巻貝部分の名残といわれて、コウイカの甲の大半は新たに”浮き”として発達したものと考えられている。
 
 生きていく環境に応じて適応していく生物の進化は、本当に興味深いものばかりだ。
 
イカの分類
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