アンデスを越えて
インカの中心地クスコまでは、ペルーの首都リマから飛行機で約1時間。早朝のランペルー航空のエアバス319には、ほとんど乗客はいない。スナックとともにサーブされる黄色いインカコーラの甘さが口の中にまとわりつく。ランペルーのエアバスは高度約7000mを飛んでいる。手が届きそうなところに白い峰がいくつも見える。ときおり小さな集落が見える。集落からは道とも思えない一筋の線が延び、山の向こうへ消えていく。アンデスを見下ろしながらの1時間は短い。徐々に高度を下げるにしたがって、乾いた土色の壁の家々が間近に見える。
着陸直前
かつての帝国の中心らしく、家並みは整然とした印象だ。機内では撮影禁止を知らせるアナウンスがスペイン語と英語で流れる。着陸したランペルーの機体からタラップを降りた直後から、息苦しく少し頭が痛い。
「やっと着いた」
これがクスコ到着の感想だった。
クスコ アルマス広場のラ・コンパーニア・デ・ヘスス教会
クスコの人口は約30万人。標高は約3600m。四方を山に囲まれたインカ時代の帝都だ。
街の中心となるアルマス広場に面して、ラ・コンパーニア・デ・ヘスス教会がある。この教会は第11代インカ皇帝のワイナ・カパックの宮殿のあった場所に建てられた。ここと同様にアルマス広場に面したカテドラルは、インカ時代のビラコチャ神殿の上に建つ。インカの建築技術は高度で、建物だけを破壊し、その土台を利用して教会やカテドラルが建築されている。さらに神殿などから奪われた銀を溶かして作られた祭壇は見事なつくりであるものの、クスコの人々がスペイン人を今も嫌うことに繋がっている。
コリカンチャの土台
コリカンチャ、Qorikancha ~ Qoriとは黄金を、Kanchaは居どころを表す。コリカンチャは太陽の神殿と呼ばれ、その壁には幅20cmもの黄金の帯が巻かれていた。 これを見たスペイン人たちは、神殿内のすべての黄金を持ち去り、溶かし、本国へ送った。あまりに大量の金がヨーロッパに流れ込んだことで、インフレになったという。さらにスペイン人たちは、コリカンチャの上部を破壊し、土台の石組みだけを残しそこにカトリック教会を建てた。
黄金がなくなった今も、曲線を描く神殿の石組みは見事というばかりである。現在は教会内部で発掘を行い、コリンカンチャの復元を進めている。